出版情報PUBLICATION
著 書
裁判例に学ぶ特許権取得戦術 山内康伸・山内伸著

本書は、特許権の取得業務に関わる弁理士、企業・大学の知財部門の方々向けの実務書です。
強い特許を取得するには、様々なスキルが要求されます。暗黙知にある発明を理解するための発明者とのコミュニケーションスキル、発明を特許要件に照らしてまとめ上げる創造スキル、出願手続を遺漏なく進める手続スキル、特許審査で特許性を認めてもらうための説得スキル、などです。
これらのスキルを自分の経験だけで積み上げるには限界があります。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ということわざがありますが、他者の経験知も参考にすべし、というのが真意と思います。
特許実務の世界で、他者の経験知は裁判例に現れています。裁判例は多くのことを教えてくれます。学ぶに如くはありません。多くの経験知を取り込み、特許権の取得戦術を磨きましょう。
本書が、このような趣旨で使って頂けますなら、著者の望外の喜びとするものであります。
(経済産業調査会 ISBN978-4-8060-2 4,500円)
序文
『技術そのものに、競争力はない。あるのは、惹き付ける魅力だけである。
競争力は、法で技術を支配する権限を与える知的財産制度によって得られる。
知的財産制度が社会の発展に導くには、個々の知的財産権に、生まれた技術(発明)を正確に反映させることが要求される。
知的財産権の創出に関与する弁理士の責務は重い。』
本書はこのような思いで書き上げました。
書きながら思ったことは、以下のようなことです。
完成された技術のもつ理(ことわり)も、完成に至る途中では暗黙知の世界にいます。
暗黙知のままでは社会の役に立ちませんし、役に立たせるには形式知に昇華させる必要があります。
特許制度の利用は技術(発明)を形式知とするための有力な手段です。これを的確に利用するには、特許要件や特許取得手続について習熟しなければなりません。習熟するには、幾多の裁判例に蓄積された経験知を利用することが効果的です。
著者は、本書をこのような思いで作りました。本書が少しでも皆様のご参考になれば、著者としてこれ以上の喜びはありません。
2020年11月1日
弁理士 山内 康伸 (第2章から第7章担当)
弁理士 山内 伸 (第1章担当)
目 次
第1章 特許要件
1.1 発明該当性
1.2 新規性
1.3 進歩性
1.4 拡大先願
1.5 先願
1.6 実施可能要件
1.7 サポート要件
1.8 明確性要件
第2章 強い特許を取る出願戦術
2.1 発明の把握の仕方
2.2 発明の思想性と出願手続上の関わり
2.3 明細書の記載ルール
2.4 明細書等の書き方
2.5 裁判例からみた強い明細書
第3章 特許を取得するための手続
3.1 出願
3.2 出願前の一般的注意事項
3.3 国内優先出願の活用
3.4 出願審査の請求
3.5 優先審査と早期審査
第4章 拒絶理由通知に対する応答
4.1 審査の進め方と出願人がとれる対応
4.2 最初の拒絶理由通知と対策の検討
4.3 明細書等の補正と最初の拒絶理由通知に対する反論
4.4 最後の拒絶理由通知と対策の検討
4.5 明細書等の補正と最後の拒絶理由通知に対する反論
4.6 分割出願
4.7 面接審査
4.8 拒絶理由通知に対する応答シミュレーション
第5章 拒絶査定に対する応答
5.1 拒絶査定不服審判の審理
5.2 拒絶査定と対策の検討
5.3 明細書等の補正と審判請求書による反論
5.4 拒絶理由通知と拒絶理由通知に対する反論
5.5 出願の変更
5.6 拒絶査定不服審判の請求シミュレーション
第6章 拒絶審決に対する応答
6.1 拒絶審決に対する不服申立
6.2 審決取消事由
6.3 訴の提起と原告の主張
6.4 訴訟手続と原告のなすべきこと
6.5 判決
6.6 審決取消訴訟のシミュレーション
第7章 出願経過が権利行使時にどう参酌されるか
7.1 出願経過が参酌される場面
7.2 中間書類のドラフト上の注意事項
裁判例索引
語句索引