パテントニュース

2025年 夏号

Vol.93

暑中お見舞い申し上げます  

暑さ厳しい折、皆様ご健康にはご留意下さい。 
弊所は8月13日(水)~17日(日)まで夏休みです。 

足摺岬(高知県土佐清水市) 

 足摺岬(あしずりみさき)は四国の西南端にある岬です。東南端にあるのが室戸岬(むろとみさき)で、地図で四国を見たとき、右下の突起が室戸岬、左下の突起が足摺岬です。足摺の方が突起の伸びが大きく、香川から行くと遠かったです。本当に! 
よくある観光用写真とは反対の西側から見た足摺岬は、空と海だけしかない所で小さな白い灯台を支える地殻の背骨という印象でした。 

 (2025年6月 撮影 山内 康伸) 

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稼げる明細書 

(山内 康伸)

今年を通してのテーマは、「明細書を通じて知財活動を考える」です。夏号では第2弾として、「稼げる明細書」を考えます。 

(1)「稼げる」場面 

特許を取得した明細書が稼げる場合とは?と聞かれたら、まっさきに答えられるのは、ライセンス設定に成功したときでしょう。しかし、ライセンス設定されるケースはそんなに多くありません。 

企業が取得する特許に、ライセンスを欲しがる人(会社)がいても、彼らは競合者であることが多いので、自然とライセンスの成立は限られてくるからです。 

企業の本業を考えたら、特許が存在することによって、市場を広げたり、新しい顧客を開拓できたりすれば、稼ぎを得たということになるでしょう。このように、本業の稼ぎを助けるのが、特許の本来の使い方といえるかと思います。 

(2)稼げなかった明細書 

私(山内)の平社員時代のことですが、会社はある制御装置を開発しました。 

その制御装置は、センサの検知精度が高かったので、出力となる制御能力も高くなっています。

この制御装置は、市場での評価が高く、会社は当然にその制御装置の特許も取得しました。取得した特許の明細書には、最も性能の高いセンサを組み込んだ内容が記載されていました。 

ここで問われるのが、その特許で市場を大きく確保できたのか(つまり稼げたか)?ということになります。が、そうはいきませんでした。 

そうなった原因は、競合先が、少し性能が落ちるがそこそこ使える次善のセンサを搭載した制御装置を売り出したからです。 

取得した特許は明細書に書かれた最善のセンサを持つ装置しか記載していませんでしたので、次善のセンサをもつ競合品には効力が及びません。 

結果として、市場には最善のセンサを搭載した製品と次善のセンサを搭載した製品とが競合することになりました。技術力だけでは市場で勝てない事情もあり、せっかく取得した特許でしたが、ビジネス上の貢献はイマイチだったことになります。 

(3)次善の技術を特許化すれば 

このケースで、先行開発した企業が、最善の制御装置に加え、次善の制御装置についても特許を取得していれば、どうなったであろうと、よく考えます。 

最善の装置の外に次善の装置の特許を取得していれば、競合先はさらに下位の技術を使わざるを得ず、技術上の競争力は弱くなっていたはずです。 

ここまで考えると、自社製品化に最善のセンサを組み込むとしても、自社の特許網構築には最善のセンサを用いた特許のほか、次善のセンサを用いた特許を取っておくべきだった、といえるでしょう。 

明細書に最善のセンサと次善のセンサの2例を書いていれば、両方を包括する特許が得られたかもしれません。 

しかしお勧めは、別々の明細書を作る方法です。 

一つ目の明細書に最善のセンサを記載し、基本発明の特許を取得します。 

二つ目の明細書に次善のセンサを記載し、代替発明の特許を別に取得します。 

こうしておくと、侵害紛争解決の場では闘いやすくなります。たとえば、無効の抗弁があっても、2件の特許とも無効にするには相手方に大きい負担を強いることになるからです。 

(4)知財部門が稼げる明細書を作ろう! 

ところで、企業の技術部門は、最善の技術の開発に全精力を注ぐのが常であって、開発途中で次善の技術に気付いたとしても以後さほど注意を払いません。 

それも無理もないことで、今出来ているもの(つまり最善技術)の将来像を考え、次々と改良案に手を打っていくからです。 

そうすると、次善の策の特許化は誰がやるのか、という話になります。著者は、知財部員の皆様がやるのが良いと考えます。多くの知財部員の方々は技術者としてのバックグラウンドを持っておられるので、それは可能と考えます。 

とはいっても、なかなか大変なのは事実です。 

私がお勧めするのは、何かしらヒントをもらって考えていくことです。 

たとえば、国際特許分類(IPC)には、センサに関し下記のような分類が記載されています。 

1/00 力または圧力の測定一般 
1/02 ・液圧または空気圧によるもの 
1/04 ・ゲージ,例.スプリング,の弾性変形の測定によるもの 
1/06 ・ゲージ,例.圧縮体,の永久変形の測定によるもの 
1/08 ・平衡力を使用するもの 
1/10 ・応力を加えた振動素子 
1/12 ・応力の印加による物質の磁気特性変化の測定によるもの 

上記分類のうち、1/04のゲージを使うならどんな構造にする、あるいは1/08の平衡力を利用するならこんな構造がよい、などを考えていくのです。ヒントがあって考えるのは、比較的容易です。 

一応の考えがまとまったら、過去の公開公報を検索しパテントマップを作りましょう。パテントマップを作れば、その過程で更なる具体案のヒントも出てくるはずです。 

(5)特許戦略につなげよう 

こうして案を出した技術を明細書にまとめ、代替発明の特許も取得すれば、市場をコントロールする力が付きます。そうすると、ビジネスでの収益向上に貢献でき、場合によってはライセンス供与の機会も確保できるかもしれません。このような知財部門の活動が企業収益の向上に直接つながれば、生きた特許戦略につながるでしょう。 

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副所長 山内伸 日本弁理士会「特別表彰」受賞 

弊所副所長 山内伸が日本弁理士会の会員表彰において「特別表彰」を受賞いたしました。2021年に続き2度目の受賞です。 

特別表彰は、弁理士会の会務を務め、その功績が特別に顕著であった者を表彰するものです。弁理士会四国会の役員や意匠委員会の副委員長を務めたほか、AI利活用ワーキンググループでの活動などが評価されたものと思います。 

今回の受賞に至りましたのは、クライアントの皆様および弁理士の諸先輩方のご支援のおかげだと感謝しております。 

今後も会務活動を通じて社会に貢献するとともに、得られた知見をクライアントの皆様に提供していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。 

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